このブログでは、放課後等デイサービスで働く私が、凸凹の特性や支援について解説しています。
今回取り上げるのは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子供の困りごとと効果的な支援について解説します。
ぜひ最後までお読みくださいね^ ^
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特性と3つのタイプ
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の主な特性は、以下の通りです。
- 不注意(注意力が散漫)
- 多動性(落ち着きがない)
- 衝動性(思い立ったら行動してしまう)
知的な遅れはなく、主に行動面で問題が生じてしまう障害です。
また、特性の現れ方によって以下の3つのタイプに分類されます。
- 「不注意」優勢タイプ
- 「多動・衝動性」優勢タイプ
- 混在タイプ
それでは、それぞれのタイプについて1つずつ解説していきます。
「不注意」優勢タイプ
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特性のうち「不注意」の特性をより強くもっているタイプです。
このタイプによくある行動には、以下のようなものが挙げられます。
- 忘れ物が多い、物をなくす
- 整理整頓ができない
- 気が散りやすい
- 集中して話を聞いたり作業したりできない
「不注意」優勢タイプは、提出物やタスクなどやるべきことを忘れやすい、整理整頓が苦手などの特徴があります。
また、外からの刺激(光や音など)に過剰に反応してしまったり、ボーッとしてしまったりすることも多くあります。
そのため、集中力を持続して物事に取り組むことも苦手です。
「多動・衝動性」優勢タイプ
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特性のうち「多動性」「衝動性」が強く現れるタイプです。
このタイプによく見られる行動には、以下のようなものが挙げられます。
- 無意識に動き回る
- 過剰におしゃべりをする
- ルールを守れない、順番を待てない
- 感情のコントロールが効かない
授業中に立ち歩いたり、指名されていないのに発言したりと、場をわきまえた言動が苦手なのが特徴です。
順番待ちや決められたルールを守ることも苦手です。そのため、集団行動から逸脱してしまうことが多くあります。
また、怒りや興奮などの感情をコントロールできなかったり、思い立った瞬間動き出してしまったりすることも多々あります。
混在タイプ
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特性がすべて混在しているタイプです。
前述した「不注意性」と「多動・衝動性」のどちらのタイプの要件も満たしているタイプを指します。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対するアプローチ
注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対するアプローチには、大きく以下の2つの方法があります。
- 療育(発達支援)
- 薬物療法
1つずつ解説します。
療育(発達支援)
療育は、「治療」ではなく「支援」です。
特性に合う環境整備をしながら、社会で生きていきやすくなるために必要なスキルを身につけさせる支援を行います。
療育は、主に以下のような場所で受けられます。
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
また、学校の特別支援学級でも療育を行いながら授業を進めていきます。
薬物療法
注意欠陥・多動性障害(ADHD)では、医学的な「治療」として薬物療法を行うこともあります。
主に、療育だけでは困難さが軽減されない場合や、対人関係トラブル等の二次障害が起きてしまう場合に用います。
薬物療法では、医師から脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリンなど)を調節する薬が処方されます。
薬を飲むことで、注意力を高めたり衝動を制御したりする作用があります。
効果が出るまでの期間や副作用などは薬によって異なるため、主治医と相談しながら処方してもらうことが大切です。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の支援の工夫
ここからは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の支援で行うべき工夫について解説します。
タイプごとにまとめますので、ぜひ参考にしてくださいね。
「不注意」優勢タイプの支援の工夫
「不注意」優勢タイプの子供たちとの関わり方で大切な点は、主に以下の通りです。
- 座席を支援者の近くにする
- 刺激物をなくす
- チェックリストを作る
- 物に目印をつける、置き場所を決める
座席を配慮することで、支援者が目を合わせたり肩をトントンと叩いたりして注意を向けさせやすくなります。
動くものが目に入る窓側の席も避けるのがベターです。余計な掲示物は刺激となるので外しましょう。
また、忘れ対策としては、必要なものやルーティンを視覚化し、チェックリストにまとめるのが効果的です。
さらに、物の置き場所を常に固定化すると、落ち着いて整理整頓ができるようになっていきます。
「多動・衝動性」優勢タイプの支援の工夫
「多動・衝動性」優勢タイプの子供たちとの関わり方で大切な点は、主に以下の通りです。
- 事前に予定を伝える、目標を立てる
- こまめに発散する時間をつくる
- 自分でコントロールできたら褒める
多動性や衝動性が強い子には、個別で事前予告をすることが大切です。
落ち着いた状態で今日の予定を伝え、「この時間はみんなと一緒に行動しよう」というように目標を立てさせます。
すべてを集団の中で行動させようとするのではなく、時間を絞って集団行動ができるよう導くのがポイントです。
がんばる時間をつくる代わりに、「動いて良い時間(=発散の時間)」も与えてあげます。
集団に入って行動できたり、感情をコントロールできたりした場面があれば、しっかりと褒めてあげることも大切です。
どのタイプにも共通する支援の工夫
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の全タイプに共通する工夫として「できることに注目する」というのが挙げられます。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、知的な遅れはなく、基本的にはコミュニケーションも問題なくとれる場合が多い障害です。
そのため、得意科目があったり、お友達に優しくしてあげる場面があったりと、良い面を発揮することも多々あります。
支援の際はできることや強みにも注目し、良さを伸ばしたり生かしたりするよう導くことが大切なのです。
おわりに
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、社会生活・集団生活を送るうえで困難が生じやすい障害です。
一方で、特性に合った支援を丁寧に講じることで、生きやすい方向へ導いていけます。
家族や学校の先生、専門家など、多くの大人でその子の特性を見取り、意見を出し合いながら、支援を工夫していけると良いですね^ ^